スーパーの乳製品コーナーに並ぶ常温保存可能なボトルのラベルを裏返すと、原材料名に「セルロース」という文字を見かけることがある。これは植物由来の食物繊維であり、粉末状になったチーズ同士が湿気で固まるのを防ぐ結着防止剤として機能している。
常温で長期保存できる利便性は、現代の忙しいライフスタイルにおいて絶大な価値を持つ。クラフト・ハインツに代表される常温粉チーズは、まさに量産化と保存性の追求が生んだ工業の結晶だ。一方で、雪印メグミルクなども家庭の食卓に向けた多様なラインナップを展開し、手軽な旨味の供給源として市場を支えてきた。しかし、固形化を防ぐためのセルロース添加や高温乾燥のプロセスは、チーズ本来が持つ繊細なアロマや水分のしなやかさを犠牲にしている側面も否定できない。