一般に「フルカラー」と呼ばれる規格は、デジタルディスプレイの領域と、紙などにインキを載せる印刷の領域で、その実体が全く異なります。この二面性を理解していないことが、あらゆる色化けトラブルの出発点となっています。
デジタル環境におけるフルカラーの基準は、光の三原色であるRGB(Red・Green・Blue)の各色を、それぞれ8ビット(256階調)で制御する仕組みに基づいています。256の3乗を計算すると16,777,216色(約1677万色)となり、技術用語ではこれをトゥルーカラー(True Color)と呼びます。人間の網膜が識別できる色の限界が概ね数百万から1000万色程度とされているため、この約1677万色は「人間の目にとって自然界のあらゆる色をほぼ過不足なく再現できる完全な色彩」として定義された歴史的経緯があります。
一方、紙媒体におけるフルカラー印刷は、全く異なる工学的手法を採用しています。印刷現場で使われるのは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色に、コントラストを補うブラック(K)を加えたプロセスカラーと呼ばれる4色のインキのみです。この4色印刷の仕組みは、紙の上に肉眼では識別できないほど微細なインキの粒(網点:ハーフトーン)を異なる角度(網角)で配置し、人間の脳内で色が混ざり合って見える錯視現象を利用しています。
つまり、デジタル画面が自ら発光する「1677万色の光の粒子」を放出しているのに対し、紙の印刷物は「わずか4色のインキの点」で光を反射させているに過ぎません。両者は「フルカラー」という同一の呼称を用いながら、工学的には全く別次元のテクノロジーなのです。