カナダを代表する植物として定着しているカエデですが、国旗に描かれているのは北米原産のサトウカエデの葉です。なぜ樹木の一葉が、国家最高の名誉である国旗の中央を飾ることになったのでしょうか。
カナダ国旗のカエデの理由を探ると、ヨーロッパからの移民が定住する遥か昔、この地で暮らしていた先住民族(ファースト・ネーションズ)の生存の歴史に行き着きます。極寒の冬を越える先住民にとって、早春にサトウカエデの樹幹から流れ出る樹液(メープルシロップの原料)は、ビタミンやミネラルを豊富に含む貴重な栄養源であり、生命の再生を告げる奇跡の恵みでした。
18世紀に入ると、入植したフランス系カナダ人たちがこのカエデを生活のシンボルとして愛用し始めます。1834年には、モントリオールで設立されたサン・ジャン・バティスト協会がカエデを公式エンブレムに採用。その後、1867年の英領北アメリカ法によるカナダ自治領の誕生に際して作られた愛国歌『メイプル・リーフ・フォーエバー』のヒットも手伝い、イギリス系住民の間にも急速に浸透していきました。
19世紀後半には陸軍の連隊章や硬貨のデザインに次々とカエデが刻まれ、第一次世界大戦および第二次世界大戦では、カナダ兵のヘルメットや墓標にカエデのマークが刻印されました。異国の戦場で祖国のために命を捧げた兵士たちの誇りとともに、カエデは名実ともに国民全体の結束のシンボルへと昇華していったのです。