筆者はこれまでに山梨リニア実験線(全長42.8km)における報道関係者向け試乗会や一般向け体験乗車に幾度となく立ち会い、その挙動を間近で観察してきました。実際に搭乗して得られる感覚は、既存の新幹線とも在来線とも決定的に異なります。
発進直後はゴムタイヤが路面を噛む「ゴロゴロ」とした微細な振動と走行音が足元から伝わってきます。ところが、速度計が時速150km前後に達した瞬間、フワッと車体が持ち上がる感覚とともに、タイヤのロードノイズがふっと消え去ります。そこからの加速力は凄まじく、航空機の離陸加速(テイクオフ)時に背中がシートへ押し付けられるようなG(加速度)を感じながら、わずか2分足らずで時速500kmへと達します。
車内モニターに表示される数値が「500km/h」を示した瞬間、車内にはどよめきが走ります。時速500kmで対向車両とすれ違う瞬間には「ドンッ」という鋭い風圧の衝撃波が伝わりますが、浮上している恩恵により、左右への激しい横揺れは最小限に抑えられています。
一方、ネット上のコミュニティや試乗体験者の声を集約すると、純粋な驚嘆と同時に現実的な指摘も散見されます。
「アトラクションとしての圧倒的スピードには感動した。しかし、路線の86%がトンネルという構造上、車窓からの景色を楽しむ旅情はほぼ皆無。ビジネスに特化した超高速移動カプセルという印象」(SNS上の試乗レビュー)
また、中間駅が建設されている神奈川県(橋本駅付近)、山梨県(甲府盆地南部)、長野県(飯田市付近)、岐阜県(中津川市)などの沿線地域では、東京へのアクセス激変による「地方創生の起爆剤」としての期待感が根強い一方、残土処理問題や駅周辺の開発遅延に対する不安の声も根強く渦巻いています。