日体大剣道部を語るうえで避けて通れないのが、夜明けとともに開始される伝統の朝稽古です。横浜市青葉区の健志台キャンパスにある武道場では、午前6時台から静まり返った空気の中に激しい踏み込みと竹刀の交わる音が鳴り響きます。
かつてOBたちの手記や特番インタビューでは、「1年生の春は足の裏の皮がすべてめくれ、テーピングを幾重にも巻きながらただ無我夢中で掛かり稽古を繰り返した」「道場の床板に染み付いた汗の量がそのまま自信になった」といった壮絶な回想が語られてきました。実際、数十回連続で繰り返される息の詰まるような切り返しや、息をつく暇もない連続打ち込み稽古は、学生剣道界でも屈指の運動負荷として恐れられていたのは紛れもない事実です。
ただし、現在の現場は単なる根性論の鍛錬場ではありません。道場内には高速度カメラが設置され、打突直後のスピードや踏み込みの衝撃値がデータとして蓄積されています。朝稽古の主目的も「極限の疲労下で無駄な力を抜き、刃筋の通った一本を打つ技術の体得」へと精緻化されました。夕方の本稽古では戦術的な地稽古や試合練習に時間を割き、週に数回はストレングス&コンディショニングコーチの指導のもと、体幹強化や股関節の可動域拡大に特化したフィジカルトレーニングが組み込まれています。猛烈な運動量という伝統の根幹を保ちながら、怪我の発生率を最小限に抑える科学的配慮が施されています。