そもそも、なぜ「Don't mind」が日本国内でこれほど広く「ドンマイ=気にしないで・元気を出して」という意味の国民的スラングへと変貌を遂げたのでしょうか。そのルーツを辿ると、昭和初期から戦後にかけての日本の学生野球や集団スポーツの現場に行き着きます。
戦前の野球界では、英語のプレーフレーズが積極的に取り入れられていました。味方のエラーに対してグラウンド内で「Don't mind it!(気にするな!)」と掛け合っていたものが、白熱する試合展開の中で音節が圧縮され、「ドンマイ」という軽快なカタカナ4文字へと短縮されたとされています。戦後、高校野球中継やスポーツ漫画などを通じてこの表現はお茶の間へと急速に浸透し、1970年代から80年代にかけて一般社会の日常語として完全に定着しました。
日本語のコミュニケーションは「相手と感情を共有すること」を重んじる高文脈(ハイコンテクスト)な性質を持ちます。そのため、「気にするな」という語釈からさらに踏み込み、「あなたの失敗は誰も責めていない」「次があるから前を向こう」という豊かな情緒的メッセージが「ドンマイ」という響きに詰め込まれていきました。しかし、この情緒的な意味づけこそが、元の英語「Don't mind」の持つ意味論的な枠組みから大きく乖離してしまった真相です。