そもそも、なぜこの芽生姜の甘酢漬けを「はじかみ」と呼ぶのでしょうか。その語源を辿ると、古代日本の言語文化にまで行き着きます。
漢字では「薑」または「椒」と表記します。古代の日本では、山椒(サンショウ)や生姜など、口に含んだときにピリッとした刺激をもたらす辛味植物全般を総称して「はじかみ」と呼んでいました。語源には諸説ありますが、主に有力とされているのが次の2点です。
- 「歯顰み(はしかみ)」転化説:口に入れて噛みしめた瞬間、あまりの辛さに顔をしかめ、歯を食いしばる様子(歯顰み)が言葉の原型になったという説。
- 「実がはじける」説:実や芽が殻を突き破ってはぜる様子を表した言葉という説。
古事記や日本書紀の中にも「薑(はじかみ)」の記述が見られます。中国から生姜が渡来した際、古来の山椒と区別するために、生姜を「くれのはじかみ(呉の薑)」、山椒を「なるはじかみ」と呼び分けた歴史があります。その後、時代が下るにつれて一般的な生姜は「しょうが」と呼ばれるようになりましたが、和食の伝統的な添え物である矢生姜の甘酢漬けにだけは、古語の雅やかな響きを宿した「はじかみ」という呼び名が残り続けました。