「先月までは様子を見ようと思っていたが、上げ止まる気配がない。手元に少しでも実物を持っておきたくて」
フロアのソファで順番を待つ都内在住の60代男性は、少し疲れたような笑みを浮かべながらそう語った。彼が手にする番号札は、午前中の段階で既に3桁に達している。かつて「金は金利を生まない資産」と揶揄された時代もあったが、ペーパーマネーに対する不信感が世界的にくすぶる2026年現在の環境下において、その評価は完全に逆転した。
銀座本店の購入カウンターでは、500グラムや1キログラムのインゴット(金地金)を手際よく買い求める客の姿が目立つ。数百万〜千数千万円単位のキャッシュや口座送金が日常的に飛び交う現場の光景は、普段の日常生活ではまず味わえない異様なリアリティに満ちている。