「なぜかいつも右(あるいは左)の鼻だけが詰まる」「日によって詰まる側が入れ替わる」という違和感を覚えたことはないでしょうか。ネット上では「重病の前兆ではないか」と不安視する声も散見されますが、実はその多くは生理現象です。
人間の鼻には「ネーザルサイクル(生理的鼻周期)」と呼ばれる自律神経のバイオリズムが存在します。誰しも健康な状態であっても、およそ2時間から数時間おきに左右の下鼻甲介が交互に充血・収縮を繰り返しています。片方を休ませ、もう片方で呼吸を維持する生理的機能であり、両鼻が通っている時間帯があれば過度に心配する必要はありません。
警戒すべきは、「常に同じ片方だけが1年中完全に塞がっている」「膿のような黄色い鼻水が出る」という病的なケースです。この場合、主に2つの病態が疑われます。
1つは副鼻腔炎(ちくのう症)です。鼻の周囲にある空洞(副鼻腔)に細菌や真菌が感染して炎症を起こし、膿が溜まる疾患です。黄色や黄緑色のドロッとした鼻汁、悪臭、眉間や頬の重圧痛、鼻水が喉に流れる後鼻漏(こうびろう)が代表的なサインです。副鼻腔炎ちくのう症の治し方としては、耳鼻咽喉科での局所処置やネブライザー治療、マクロライド系抗菌薬を少量長期投与する薬物療法が基本となり、難治性の場合は内視鏡による副鼻腔手術が検討されます。
もう1つが、鼻の骨格異常である鼻中隔弯曲症です。左右の鼻腔を隔てる仕切りの壁(鼻中隔)が極端にS字やC字に曲がっているため、狭い側の空気の通り道が物理的に塞がれてしまいます。これは軟骨と骨の成長速度のズレによって生じる構造的異常であり、点鼻薬や内服薬では曲がった骨を治すことはできません。成人男性の約7〜8割に軽度の弯曲は見られますが、日常生活に支障をきたす重度の鼻づまりがある場合は、弯曲した軟骨を切除して真っ直ぐに矯正する手術(鼻中隔矯正術)が根本治療となります。鼻中隔弯曲症手術費用は、健康保険の適用(3割負担)で入院期間や併施する手術(下鼻甲介切除など)により約3万〜10万円程度です。高額療養費制度を利用すれば、自己負担額を一定の限度額内に抑えることが可能です。