初めて訪れた観光客が「宮古そば どらえもん」で注文した品を受け取ると、一様に目を丸くする。丼の表面には細切りのネギが散らされているのみで、沖縄そばの象徴である三枚肉やかまぼこの姿がどこにも見当たらないからだ。しかし、箸を差し入れて麺を持ち上げると、底からしっかりと味の染み込んだ豚肉と平かまぼこが顔を出す。
この「具を麺の下に隠す」盛り付けには、宮古島の過酷な歴史と先人たちの知恵が色濃く反映されている。その理由については、民俗学や食文化研究の現場において主に三つの説が語り継がれている。
第一の説は、琉球王朝時代から薩摩藩支配下にかけて宮古島に課された極めて苛烈な税制「人頭税」に由来する生活防衛の知恵だ。贅沢が厳しく禁じられていた時代、役人の抜き打ち検査を警戒した島民が「私たちは肉など入っていない粗末な素そばを食べています」と質素を装うために具材を麺の下へ隠したという歴史的背景である。
第二の説は、より実用的な生活の知恵に根ざしている。かつての沖縄では、現在のように麺をその場で茹で上げるのではなく、事前に茹でて油をまぶした麺を常温保存していた。具材を下に敷いて熱い麺をかぶせることで、乾燥を防ぎつつ具材を芯まで温め、さらに出汁の風味を麺全体に行き渡らせるという調理上の合理性があったのだ。
そして第三の説が、もてなしの心である。「具が乗っていない」と一瞬落胆させた直後、麺の下から大ぶりの肉が現れる驚きと喜びを客人に味わってもらうという、島人ならではの温かいユーモア精神だ。一杯の丼の中に、宮古島の人々が歩んできた苦難の歴史と豊かな知恵が凝縮されている。