エレンによって「地鳴らし」が発動し、ジークの理想としたエルディア人安楽死計画が完全に瓦解した際、イェレナは精神的な梯子を外されることになります。自らが崇拝した「神」であるジークを失い、さらにマガトから虚言壁と欺瞞を看破された彼女は、生きる目的を根本から喪失しました。
ハンジやマガトらの同盟軍に身柄を拘束され、激戦の中で左腕を骨折する重傷を負いながらも、イェレナは最終回まで生存しています。飛行艇を飛ばすための燃料補給を巡る混乱の中、キヨミ・アズマビトの手引きによって救命艇でオディハを離脱。原作第139話(最終話)では、難民キャンプの片隅でキヨミらとともに生活を再建する後姿が描写され、静かに歴史の舞台から退場していきました。
【プロの結論】承認欲求の暴走と大義に依存する危うさ
社会学および心理学的な観点からイェレナの足跡を再検証すると、彼女はカルト的な指導者に心酔することでしか自己の存在価値を定義できなかった「承認欲求の犠牲者」であったと評価できます。
何の後ろ盾もない一般人であった彼女が、200cmを超える長身と卓越した弁舌、そして狂信的な情熱だけを武器に世界の軍事バランスを揺るがす位置にまで上り詰めた行動力は驚異的です。しかしその根底にあったのは、「特別な人間として歴史に記されたい」という自己愛的な執着でした。ジークという絶対的なカリスマを偶像化し、他者の命を意に介さない非情な粛清を重ねた彼女の姿は、現代社会においても散見される「過激な思想やインフルエンサーに自己を同化させて暴走する心理」の恐ろしさを克明に描き出しています。