呼気からツンとした刺激臭や酸っぱい悪臭が放たれる現象は、単なる口内衛生の問題ではありません。胃の中で分泌される胃酸は、pH1〜2という強烈な酸性度を持つ塩酸を主成分としており、タンパク質を分解する強力な消化液です。通常、胃と食道の境目にある下部食道括約筋(LES)が弁の役割を果たし、胃酸の逆流を防いでいます。
しかし、加齢や腹圧の上昇、過食、ストレスなどによってこの括約弁が緩むと、胃酸や未消化の食物が食道から喉元、さらには口腔内へと押し上げられます。これが「呑酸(どんさん)」と呼ばれる現象であり、ゲップとともに酸っぱい匂いや胃液特有の生臭さが口から漏れ出す直接の引き金となります。
日本消化器病学会の診療ガイドラインでも示されている通り、酸の逆流が慢性化すると食道粘膜がただれ、「逆流性食道炎」へと進行します。食道粘膜の損傷は、胸焼けや喉の違和感だけでなく、炎症部位からの浸出液や出血が混ざり合うことで、より一層強烈で不快な口臭を生み出す原因となります。