稲荷崎高校は、ユース代表にも選ばれる高校屈指のセッター・宮侑をはじめ、治、角名倫太郎、尾白アランといった全国区の天才が揃うチームです。血気盛んで奔放、時にコート内外で衝突を繰り返す彼らを完全に掌握していたのが北信介でした。彼がチームを従えた方法は、威圧や体罰といった暴力的な権力行使ではなく、純度100%の「正論」と「揺るぎない生活態度」でした。
宮侑が体調管理を怠って風邪を引いた際、北は冷淡に「体調管理もできん奴に練習する資格はない。帰れ」と言い放ちます。そこには一切の私情や怒りは混ざっておらず、ただ事実と道理だけが提示されます。宮兄弟が喧嘩を始めれば、ただ静かに視線を向けるだけでその場を凍りつかせ、鎮圧してしまう。尾白アランをして「北の正論は時に攻撃力を持つ」と言わしめる所以です。
現代の組織心理学において、優れたリーダーシップの要件として語られる「心理的安全性」と「公明正大さ」。北信介はその体現者です。機嫌や感情によって態度を変えず、相手がエースだろうが補欠だろうが完全に同じ基準で接する。練習前の道具の手入れ、体育館の清掃、毎日の体温測定に至るまで、彼自身が誰よりも規律正しくやり抜いているからこそ、天才たちも言い訳ができず、心の底から敬服せざるを得ないのです。