「なぜあの人は状況を見ればわかるはずの優先順位を間違え、悪びれる様子もないのか?」――職場の同僚が抱く最大の疑問はここに集約されます。周囲から見れば信じがたいミスを連発する背景には、性格の善し悪しではなく、心理学でいう「ダニング=クルーガー効果」が深く関係しています。
能力が十分でない人ほど、自身の能力を過大評価し、自分がミスをしている事実そのものを認知できません。これが自覚がない人の心理の正体です。彼らは周囲を困らせようとして手を抜いているのではなく、本人の中では「全力を尽くしている」「自分は悪くない」という強固な防衛機制が働いています。そのため、周囲からやんわりと指摘されても「自分に対する理不尽な攻撃」と歪んで受け止めてしまい、改善の契機を自ら遮断してしまうのです。
また、同僚を苛立たせる代表例がメモを取らない人の心理です。「頭で覚えられると思った」「後で確認すればいいと考えた」と弁明するケースが目立ちますが、その本質は認知リソース(ワーキングメモリ)の見積もりミスにあります。マルチタスクや複雑な業務指示を脳内だけで処理できると過信した結果、重要事項を瞬時に忘失し、結果として「空気が読めない」「指示を聞いていない」という致命的なトラブルに直結します。