西加奈子『きりこについて』なぜ泣ける?黒猫ラムセスの名言と結末を徹底解説

西加奈子『きりこについて』なぜ泣ける?黒猫ラムセスの名言と結末を徹底解説

西加奈子『きりこについて』なぜ泣ける?黒猫ラムセスの名言と結末を徹底解説とはどのようなものなのか? 専門的な分析を整理してお届けします。

物語の主人公・きりこは、生まれたときから周囲が息をのむほどの「ぶす」でした。しかし、深い愛情を注ぐ両親のもとで育ったきりこ自身は、自分が醜いという自覚を一切持たず、天真爛漫で幸福な幼少期を過ごします。世界の美しさを信じて疑わなかったきりこの日常は、小学校5年生のときに一変しました。好意を寄せていた同級生・大友くんから放たれた「おまえ、ぶすやんか」という残酷な一言によって、自らの容姿が社会的な「異形」であることを突きつけられたのです。

深く傷つき、自室に引きこもってしまったきりこ。そんな絶望の底にいた彼女が出会ったのが、小学校の体育館裏にいた1匹の黒猫でした。エジプトの偉大な王から名付けられたその猫「ラムセス」は、人間の言葉を完璧に理解し、きりこと心を通わせる類まれな知性を備えていました。ラムセスは決して安易な慰めを口にせず、知的でユーモアあふれる言葉によって、きりこに外の世界の広さと物事の多面性を教え込みます。

ラムセスという唯一無二の理解者を得たきりこは、徐々に心の平穏を取り戻し、成長して社会へと踏み出していきます。アルバイト先での出会いや新たな恋、そして容姿に囚われない人間関係の構築。しかし、命あるものには必ず別れの時が訪れます。きりこを支え続けた黒猫ラムセスは、猫としての天寿を全うし、静かに息を引き取ります。

最愛の相棒を失ったきりこが辿り着いた境地こそが、本作のクライマックスです。きりこは鏡に映る自分の顔を見つめ、自分が紛れもなく「ぶす」であることを完全に受け入れながらも、その奥にある自らの命の尊厳と、ラムセスと共に見てきた世界の美しさを確信します。容姿の優劣という薄っぺらなモノサシを捨て去り、自分自身の人生を誇らしく肯定して歩み出す姿は、読む者の胸を激しく揺さぶります。

伊藤 翔太
著者

伊藤 翔太

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。