書店で定価数千円で売られていた本が、なぜ数十年を経て数十万円まで跳ね上がるのでしょうか。取材を進めると、高騰の裏には市場ならではの明白な力学が働いていることが分かります。
第1の理由は、物理的な現存数の少なさと再版の不可能性です。昭和アイドル写真集や90年代のカルチャー本の中には、事務所の移籍・解散、あるいは著作権・肖像権の複雑な権利関係によって、2度と増刷できない作品が少なくありません。需要に対して供給が完全に閉ざされているため、ヤフオク写真集落札相場でも価格が釣り上がり続けます。
第2の理由は、海外アートコレクターによる爆発的な買い占めです。特に日本の60〜80年代モノクロ写真集は欧米で極めて評価が高く、MoMA(ニューヨーク近代美術館)などに収蔵されるレベルの作品は、国内の古書店から海外バイヤーへと次々に流出しています。円安の影響も重なり、海外資本が日本の絶版写真集買取相場全体を押し上げている構図です。
第3に、紙質や装丁の再現困難さが挙げられます。高度経済成長期からバブル期にかけての写真集は、現在では再現できない特殊なグラビア印刷技術や豪華なクロス装丁が施されており、本そのものが工芸品としての価値を帯びています。