インターネット上で「キャノーラ油は体に悪い」と主張される背景には、主に3つの要素が複雑に絡み合っています。それが「心毒性を持つエルカ酸の歴史」「製造時の化学溶剤への懸念」、そして「海外の研究機関が発表したマウス実験の論文」です。
古くから使われていた従来種のアブラナ(菜種)には、過剰摂取によって心臓病変を引き起こすリスクがある「エルカ酸」が含まれていました。しかし、1970年代にカナダで品種改良が行われ、エルカ酸と甲状腺障害の原因となるグルコシノレートを極限まで排除した安全な品種「キャノーラ種」が誕生しました。現在国内で流通しているキャノーラ油には、危険視される濃度のエルカ酸は含まれていません。
また、一部で話題となったのが2017年に発表されたキャノーラ油と認知症に関する論文(米テンプル大学の研究チームによるマウス実験)です。アルツハイマー病モデルマウスにキャノーラ油を長期間投与したところ、記憶障害やアミロイドβの蓄積が見られたという報告でした。しかし、この研究は「人間が通常の食事で摂取する量を遥かに超える極端な投与量であること」「人間に対する臨床試験ではないこと」などから、世界中の栄養学者や専門機関から過剰反応を戒める指摘が相次いでいます。キャノーラ油の危険性や噂の真相を検証すると、実験の文脈を無視したセンセーショナルな切り取りが一人歩きしているケースが大半です。