ネット上には「洗濯ネットに入れて手洗いコースなら洗える」「キャップ専用フレームを使えば洗濯機でも平気」といった情報が散見されます。しかし、帽子の構造力学や生地加工の現場視点から断言すると、ニューエラ(特に代表作である59FIFTYや9FORTY)の洗濯機投入は致命的な破壊行為にほかなりません。
ニューエラのキャップが美しい立体形状を維持できる秘密は、フロントパネルの内側に仕込まれた「クラウン芯地(バックラム)」にあります。この芯地には熱と糊(糊付け加工)による特殊な成形が施されており、洗濯機による激しい水流や遠心脱水の圧力が加わると、糊が溶出・破断して繊維が折れ曲がってしまいます。一度折れ目がついた芯地は、繊維内部の結合が壊れているため、自然乾燥させても二度と元のシャープな立ち上がりを再現できません。
さらに、バイザー(ツバ)のカーブや硬さを支える芯材、そしてアイデンティティとも言えるメタリック仕様のサイズステッカーは、長時間の浸水に耐えうる設計にはなっていません。水を含んだステッカーは粘着剤が白濁・剥離し、ウールやコットン素材は急激な縮みや色泣き(色移り)を引き起こします。大切なコレクションの寿命を縮めないためにも、「丸ごと水没させる洗濯」という発想を捨て、「汚れの部位を見極めたピンポイントの手洗い」へシフトすることが不可欠です。