「歌舞伎町から中国マフィアが消えた」という言説の裏で、見落としてはならないのが「怒羅権(ドラゴン)」の動向です。中国残留孤児の2世・3世を中心に結成されたこの組織は、かつて暴走族から準暴力団へと指定され、歌舞伎町でも恐れられる存在でした。
怒羅権(ドラゴン)の現在と組織の分裂
警察庁が指定する準暴力団としてマークされてきた怒羅権(ドラゴン)の現在は、かつてのような一枚岩の武闘派集団ではありません。創設メンバーの一人である汪楠(ワン・ナン)氏が自著やメディアで明かしているように、古参メンバーの多くは刑務所への収監、高齢化、あるいは更生して合法的なビジネスへ転身しています。
しかし、組織の一部は分裂・細分化し、より検挙されにくい形態へと進化しました。刺青を見せて街を威圧するスタイルは完全に過去のものとなり、スーツを着た経営者として貿易業、飲食店経営、IT関連ビジネスを装いながら、裏で違法なスキームを操る知能犯へとシフトしています。
「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」への合流
警察庁が2024年以降、最優先の取り締まり対象として指定しているのが匿名流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」の実態です。テレグラムやシグナルといった秘匿性の高い暗号資産・通信アプリを使い、面識のない末端を「闇バイト」で集めて強盗や特殊詐欺を行わせるこのネットワークに、旧怒羅権系や中国系犯罪インフラが深く関与していると見られています。
具体的には、マネーロンダリング(資金洗浄)の舞台として中国系の地下銀行ネットワークが利用されたり、特殊詐欺のコールセンターが海外拠点に置かれたりするなど、国境を越えた分業体制が敷かれています。彼らは歌舞伎町の路上に立つ必要すらありません。タワーマンションの一室や海外の拠点から指示を出すだけで莫大な資金を吸い上げており、「街から姿を消した」のではなく「目に見えないデジタル空間へ潜行した」というのが治安当局の見立てです。