日本の山の原初的な神として君臨するのが大山祇神である。山林、鉱山、海原に至るまですべてを司るこの偉大なる神への崇敬は、縄文の昔から列島に根づいてきた。山そのものを御神体とする山岳信仰は、自然への絶対的な畏怖と感謝から生まれた日本人の基層信仰だ。
そこに決定的な変革をもたらしたのが、7世紀末に現れた呪術者・役小角である。彼は名だたる険峰を駆け巡り、仏教、道教、神道が融合した修験道を創始した。役小角が開いた行場は、単に神を拝む場所ではなく、過酷な修行を通じて自らの中に神仏の力を宿す変革の舞台となった。現在も山頂に祀られる祠の多くは、修験者たちが命を賭して拓いた祈りの痕跡をとどめている。