日韓の言語交流の現場では、この「チング」の壁をめぐってどのような感情の行き交いがあるのでしょうか。ソウル市内の語学堂に通う日本人留学生や、日韓ビジネスの最前線に立つ関係者の証言から実態を検証します。
都内のIT企業で働く韓国人男性(32)は、取材に対して次のように語っています。
「日本人の同僚から『僕たちもう友達(チング)ですよね』と笑顔で言われた時、悪気がないのは痛いほど分かりつつも、背筋に一瞬チクッとした緊張が走りました。韓国人の心理として、年下から『チング』と言われると『ナメられているのか?』『礼儀を弁えない人間なのか?』という無意識の防衛本能が働いてしまうのです。関係を壊したくないからこそ、日本人の方には『チナン サイ(親しい間柄)』という表現を使ってほしいのが本音です」
一方で、ドラマ制作現場の通訳を務める関係者からは、あえて年齢の壁を越えて「チング」関係を結ぶ特殊な例外事例も報告されています。
「韓国でも芸能界やクリエイティブな業界では、1〜2歳の差であれば、双方が合意した上で『ヤジャタイム(年齢や上下関係を逆転させてタメ口で話す無礼講の時間)』を経て、特例的に『チングをする(친구를 먹다)』という契約を交わすケースがあります。ただし、これはお互いに相当な信頼関係と覚悟が醸成されている場合に限られます」
【プロの結論】韓国の対人関係において失敗を避けるための判断基準
日韓コミュニケーションのトラブルを防ぐための明確な境界線は極めてシンプルです。
- チングと呼んで良い条件:相手と「西暦の生まれた年が完全に一致」しており、かつ相手から「タメ口でいこう」と合意が得られた場合のみ。
- 絶対にチングと呼んではいけない条件:相手が自分より1歳でも年上である場合、または仕事・ビジネス上の利害関係が絡む相手である場合。この場合は迷わず役職名、あるいは親密度に応じて「オッパ・オンニ・ヒョン・ヌナ」の呼称を選択すること。