ブリキの木こりのオリジンは、1900年の原典のみならず、現代の舞台や映像作品でも大胆な再解釈が加えられてきました。特に世界的人気を誇るミュージカル『ウィキッド』では、物語の構造そのものが劇的に翻案されています。
グレゴリー・マグワイアの原作および名作ミュージカル『ウィキッド』におけるボックの造形は、ボームの原典をリスペクトしつつも、より悲痛な因果関係を構築しています。グリンダに恋い焦がれながらも体よくあしらわれ、足の不自由なネッサローズ(後の東の悪い魔女)の介護役を押し付けられたボック。別れを切り出したことで逆上したネッサローズの黒魔術によって心臓を握り潰されそうになり、エルファバの機転によって「心臓なしでも生きられるブリキの身体」へと作り替えられます。
彼が西の悪い魔女(エルファバ)を激しく憎悪し、魔女狩りの先頭に立つ動機は、まさにこの「望まぬ身体に改造された怨嗟」でした。原作のニック・チョッパーが持っていた純朴な優しさと、ウィキッドのボックが抱くやり場のない復讐心。両者の差異を知ることで、キャラクターが内包する多面的なテーマ性が浮き彫りになります。