「リボンの『行と段落の間隔』から『1.0』を選択したのに、行間が1ミリも縮まない」というトラブルに直面した経験を持つ方は少なくないはずです。大手ITサポート企業や社内ヘルプデスクの集計データによると、Wordの操作に関する問い合わせのうち、実に約34%がレイアウトや行間設定の不具合に関する相談で占められています。ユーザーが「行間を詰める」という直感的な操作を行っても期待通りに動かない背景には、Wordに潜む3つの構造的な罠が存在します。
第1の罠が、「グリッド線に合わせる」機能の強制介入です。Wordの初期設定では、便箋の罫線にあたる「行グリッド線」が用紙全体に張り巡らされており、文字はこの見えないマス目に自動吸着(スナップ)する仕様になっています。文字サイズが規定のマス目の高さを1ポイントでも超えると、Wordは文字が重なるのを防ぐために「次のグリッド線」まで強制的に改行幅を飛ばしてしまうのです。これが、わずかなフォント変更で行間が突如2倍に膨れ上がる怪現象の正体です。
第2の罠は、Windows環境の標準フォントであるWord游明朝の行間が広すぎる原因にあります。游明朝や游ゴシックなどのモダンフォントは、画面表示の視認性や欧文との調和を高める目的で、フォント自体の内部データ(アセンダー・ディセンダーと呼ばれる上下の余白情報)がMS明朝などに比べて広めに設計されています。このフォント側の余白とWordのグリッド機能が衝突することで、意図しない巨大な空白が生み出されてしまいます。
第3の罠が、段落前後の不要な余白設定です。近年のWordでは、改行(Enterキー)を押した際に段落と段落の間に自動でスペースを空ける設定がデフォルトで有効になっているケースが目立ちます。行間そのものではなく「段落の外側の余白」が空いている状態であるため、いくら行間数値をいじっても見た目が一切変わらないという袋小路に陥るのです。