なぜ役所が発行する証明書なのに、わざわざ「写し」という紛らわしい表現を使うのでしょうか。その答えは、日本の住民登録制度の根幹を支える住民基本台帳法公式ルールにあります。
住民基本台帳法第6条および第7条において、市区町村は住民に関する氏名、生年月日、性別、住所などを記録した「住民票」を磁気ディスクや帳簿によって作成・管理することが義務付けられています。つまり、法的な意味における住民票原本と写しの違いを厳密に定義すると、役所のサーバー内に格納されたマスターデータそのものが唯一無二の「原本」なのです。
住民票原本は公用保管が厳密に定められており、たとえ本人であっても役所の外部へ持ち出すことは法律上絶対に許されません。そのため、私たちが行政機関や民間企業に居住関係を証明する書類を提出する際には、原本のマスターデータから正確に転写(出力)し、自治体首長が「この記載内容は原本と相違ありません」と証明した用紙を交付します。原本を書き写して証明した書類であることから、法律上の正式名称として「住民票の写し」と呼ばれているわけです。
都内の区役所戸籍住民課に勤務するベテラン職員は、窓口での現場実態を次のように明かします。「『写しを持ってきてと言われたから、手持ちのものをコピーした』と持参される方が、新生活シーズンには後を絶ちません。日常生活の感覚からすれば極めて自然な発想ですが、行政用語としては『役所が発行した証明書用紙そのもの』でなければ法的効力を持たないのです」。