宿の看板である「絶景露天風呂」からの眺望は、言葉を失うほど圧倒的だ。眼下には広大な伊勢平野、空気が澄み渡る日には遠く伊勢湾までが青い帯のように見渡せる。だが、この圧倒的な体験を前に誰もが直面するのが「混雑」という現実だろう。
そこで取材班は、宿のスタッフや常連客から混雑を巧みに回避する裏ワザを徹底的に聞き出した。狙い目はふたつ。ひとつはチェックイン直後の午後3時15分から4時までのわずかな隙間。多くのゲストが部屋で一息ついている時間帯は、湯口のせせらぎだけが響く静寂の世界をほぼ独占できる。もうひとつは、朝食のピークが始まる直前、夜明けとともに湯船へ向かう朝6時前後の時間帯だ。朝霧が鈴鹿の峰々を包み込み、刻一刻と茜色に染まる平野のパノラマを、肩まで浸かりながら誰にも邪魔されずに味わえる特権は計り知れない。