店頭でパックや箱を選ぶ際、あるいは自家菜園でハサミを入れる際、どの果実が最も糖度を蓄えているかを外観だけで瞬時に見極めるプロの鑑識眼が存在します。選果場や篤農家が共通してチェックしているのは、以下の4つの身体的特徴です。
第1の指標は「果梗(ヘタの軸)の細さ」です。太い枝から真っ直ぐ伸びた太い軸の果実は、樹勢が強すぎて水分が過剰に送り込まれ、大味になりがちです。一方で、細い小枝の先につき、軸が楊枝のように細い実は、適度な水分ストレスを受けながらじっくりと養分が蓄積された証拠であり、糖度が極めて高くなります。
第2の指標は「果頂部(お尻)の形状とへその凹み」です。みかんの形が縦長のラグビーボール状(腰高)のものは未熟傾向があり、酸味が強く残ります。対して、横に平たい扁平型で、ヘタと反対側のお尻のくぼみ(へそ)の周りに細かな放射状のシワや菊花状の凹凸が現れている実は、細胞分裂が極限まで進んだ「完熟みかん」の典型例です。
第3に「油胞(ゆほう)の密度」を見ます。果皮の表面にある無数の小さな粒々(油胞)がきめ細かく、隙間なくびっしりと密集している実を選んでください。油胞が粗くゴツゴツしている果実は皮が厚く、中身の食味も粗雑になりやすい傾向があります。
第4の指標は「果皮の紅の濃さ」です。単に黄色いのではなく、赤みがかった濃い橙色(柿色に近い色調)を帯びている実は、日光を十二分に浴びて光合成産物が果実に送り込まれた証拠です。
収穫時の作業においても、プロとアマチュアの間に決定的な差が出ます。果樹園で徹底されているのが「2度切り(二段切り)」と呼ばれる収穫技術です。専用の収穫ハサミ(刃先が反り返った柑橘用ハサミ)を用い、まずは果実から数センチ離れた位置で枝を荒切りします。その後、ヘタの軸の根元ギリギリを狙い、果皮を傷つけないよう水平に平らに切り直します。軸の切り残しが数ミリでもあると、収穫カゴや保管箱の中で隣のみかんの皮を突き破り、そこからカビ(青かび病・緑かび病)が侵入して箱全体を腐敗させる壊滅的な被害を招きます。美味しい実を守るためには、ハサミの刃の背を果実に密着させ、軸を完全にフラットに整える丁寧な手仕事が不可欠です。