スピードワゴンの代表作である甘い言葉漫才は、最初から計算し尽くされて設計されたわけではありませんでした。ネタ作りを担当する小沢一敬と、ツッコミとして舞台を統率する井戸田潤の間で起きた、極めて自然な日常のやり取りが契機となっています。
当時のインタビューや特番で語られた回顧録によると、小沢はプライベートでも文学や洋画、少女漫画の世界観を好む筋金入りのロマンチストでした。ある日、移動中や楽屋で小沢が何気なく口にしたキザな恋愛観や詩的なフレーズに対し、あまりの気恥ずかしさと衝撃から井戸田が思わず「甘いよ!」「あまーい!」と声を張り上げたことが、すべての始まりでした。
二人はこのやり取りを漫才のギミックとして舞台上に移植することを決意します。小沢が客席に向かって囁くように甘いシチュエーションを語り、井戸田が客席やカメラに向かって「あまーーい!」と絶叫する構成を磨き上げた結果、従来の正統派しゃべくり漫才とは一線を画す「シチュエーション&フレーズ漫才」の金字塔が完成しました。