2016年、契約終了に伴い彼女が選択したのは「のん」という新しい名前での再出発だった。芸能人が移籍や独立に際して本名を使えなくなるという現実は、世間に強い衝撃を与えた。
表現の場を奪われたかに見えた彼女だが、同年公開の長編アニメーション映画『この世界の片隅に』で主人公・すず役の声優を務めると、その卓越した演技力で観客と批評家を魅了。作品は大ヒットを記録し、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞するなど、日本映画史に刻まれる金字塔となった。「のん」という名が単なる逃げ道ではなく、新たな表現者としての記号に変わった瞬間であった。