サワガニを調理するうえで最も重要な知識が、絶対に生や半生で食べてはならないという点です。清流に棲むサワガニは一見すると非常に清潔に思えますが、実はウェステルマン肺吸虫(はいきゅうちゅう)という危険な寄生虫の中間宿主となっています。
万が一、生きた状態のサワガニをそのまま食べたり、火の通りが不十分な状態で摂取したりすると、幼虫が人間の体内に入り込みます。幼虫は小腸の壁を突き破って腹腔内を移動し、横隔膜を貫いて肺へと侵入して成虫になります。感染すると激しい咳、血痰、胸痛、呼吸困難といった呼吸器症状を引き起こし、重症化すると肺気胸や胸水貯留、さらには脳に侵入して麻痺や痙攣などの深刻な神経障害を招く恐れがあります。
実際に過去には、キャンプやテレビの罰ゲーム感覚でサワガニを生食した人が重篤な感染症に陥った事例がいくつも報告されています。また、調理時にサワガニを触った手やまな板、包丁などの調理器具を介して幼虫が口に入る二次感染のリスクもあるため、調理後の器具や手洗いの消毒も徹底しなければなりません。
ウェステルマン肺吸虫を確実に死滅させるには、中心部までしっかりと加熱することが絶対条件です。沸騰したお湯で茹でる場合は中心温度75℃以上で1分以上の加熱、油で揚げる際も後述する二度揚げによって完全に芯まで火を通す必要があります。「新鮮だから刺身で」「少しレアな方が柔らかい」という油断は極めて危険であることを肝に銘じてください。