近年のメキシコシティを語る上で避けて通れないのが、ロマー・ノオルテ地区やコンデサ地区を中心とした急激なジェントリフィケーション(高級化)である。北米や欧州、そして日本からも急増したリモートワーカーたちによって、かつてのアートの街は一変した。
英語が飛び交うお洒落なカフェが立ち並ぶ一方で、長年その土地で暮らしてきた地元住民が家賃の高騰によって押し出されるという深刻な歪みが生じている。壁に吹き付けられたグラフィティの数々は、経済的恩恵と文化の摩擦の狭間で揺れる街の悲鳴でもある。観光客やノマド層が見るキラキラした一面のすぐ隣に、生き残りをかけた住民たちの切実な現実が並走している。