かつて「組織の三菱」と呼ばれた三菱財閥だが、現在の三菱グループと岩崎家の間には、直接的な資本による支配関係は存在しない。終戦後の財閥解体命令によって一族の持ち株はすべて放出され、創業者一族による大株主としての主導権は完全に終焉を迎えたからだ。
現在の三菱グループ各社の主要株主名簿を見ても、岩崎家の個人名が筆頭株主として名を連ねることはない。しかし、グループの金曜会(主要企業24社のトップが集う懇話会)や関連団体において、岩崎家は「創業家」としての歴史的尊厳を保ち続けている。
例えば、三菱養和会などの公益法人や創業家にゆかりのある記念事業において、一族の代表者が名誉職や理事として関わるケースは見られる。ビジネス上の決定権を行使することはないものの、グループの精神的支柱、あるいはシンボルとしてのリスペクトは脈々と生き続けているのだ。