連載当時、一部の読者の間では「戦闘に参加できないアイリスは足手まといになるのではないか」という短絡的な見方も散見されました。しかし、大久保篤氏が仕掛けたストーリーテリングにおいて、彼女の非力さこそが計算された伏線だったのです。
本作の根本的なテーマは「炎という破壊の力に対し、人間はいかにして心を保ち救いを祈るか」にあります。暴力的な火力による解決が続くなかで、アイリスの捧げる鎮魂は、焔ビトとなった人間の尊厳を取り戻す唯一の儀式でした。彼女が無力であるからこそ、第8の隊員たちは命懸けで彼女を守り、彼女の祈りが隊の倫理的境界線を維持していたのです。
「戦えないヒロイン=受動的」という先入観を鮮やかに覆し、最終盤では彼女自身の魂のあり方が世界崩壊を食い止める決定打となりました。ネット上で生じた数々の誤認は、作品が提示した深遠なギミックの証明でもあります。