『もののけ姫』が残した文化的功績の一つに、専業声優のみに頼らず、日本を代表する舞台俳優・映画俳優を大胆に配した重厚なアンサンブルキャストが挙げられます。松田洋治演じるアシタカを軸に、周囲を取り巻く登場人物たちにも錚々たる顔ぶれが集結しました。
ヒロインのサン役、そしてアシタカを故郷から送り出すエミシの少女・カヤ役の二役を演じたのは女優の石田ゆり子です。荒々しくも純粋な山犬の姫と、伝統に縛られた部族の娘という対極の存在を見事に演じ分けた石田と、松田の凛とした掛け合いは、作中に奇跡的な緊張感とリリシズムをもたらしました。さらに、タタラ場を統べるエボシ御前役には田中裕子、山犬の長・モロの君役には美輪明宏、猪神・乙事主役には昭和の大名優・森繁久彌が名を連ねています。
実力派俳優陣が揃う中で、松田洋治の存在感はひときわ異彩を放っていました。感情をむやみに叫ぶのではなく、息遣いや言葉の語尾に潜む微細なニュアンスを繊細にコントロールする芝居は、スタジオジブリが志向したリアリズムの極致といえます。