番組サイドから出される公式発表資料に並ぶ文言は、そのほとんどが「本人の意向を尊重し」「今後の音楽活動への専念」「スケジュールの調整がつかないため」といった定型句に集約されます。しかし、当時の特番インタビューや自著・手記、関係者の証言を丹念に紐解くと、そこには表現者としての深刻な葛藤が浮かび上がってきます。
最大の摩擦要因は、「バトルMCとしての消費」と「楽曲制作者としてのアイデンティティ」の衝突です。ある歴代モンスター経験者は、過去のロングインタビューにおいて当時の胸中を次のように告白しています。
「毎週の収録が近づくにつれ、普段の会話や街の看板を見てもすべてが即興のライミングに変換されてしまい、純粋な楽曲制作に使うべき脳の領域が完全に侵食されていた。スタジオに入る前夜は胃痛で一睡もできず、負ければ『モンスター失格』と叩かれ、勝っても『勝って当たり前』と思われる。このままでは自分の音楽が死んでしまうと感じた」
公の場で見せる堂々たる立ち振る舞いとは裏腹に、収録の合間に見せる表情の翳りや、控室で無言のまま集中を高める姿は、関係者の間でも度々目撃されていました。また、テレビや大手配信メディアが求める「分かりやすいキャラクター付け」や「煽りVTRの演出意図」と、ストリートカルチャー特有のリアリティを重んじるアーティスト側の美意識との間で、演出方針を巡る激しいディスカッションが交わされていたことも事実です。