鷲子山上神社を訪れた参拝者がまず息を呑むのは、境内の至る所に引かれた「県境の境界線」です。本殿や大鳥居のちょうど中心を、栃木県(那珂川町)と茨城県(常陸大宮市)の県境がまっすぐに貫いています。
この特異な境界配置の背景には、古代から続く律令期の国境画定と信仰圏の歴史が存在します。下野国(現在の栃木県)と常陸国(現在の茨城県)の境にそびえる鷲子山は、古くから両国の民にとって境界を守護する共有の聖域でした。明治時代の廃藩置県やその後の行政区画設定においても、どちらか一方に帰属させるのではなく、神仏習合時代の公平な祭祀権を重んじて「境界線上に社殿を据え置く」判断が維持されたのです。
現在でも、境内には栃木県側と茨城県側それぞれの社務所や役員会が存在し、神社本庁の登録上も2つの県に跨る形で運営されています。参拝者は本殿中央に立つことで、右足で下野の地を、左足で常陸の地を踏みしめる体験が可能です。スピリチュアルな観点からも、二つの異なる大地のエネルギーが交錯・中和する「ゼロ磁場的なパワースポット」として解釈されており、両県から二重の神徳を授かることができる霊験あらたかな場所として尊ばれています。