1969年、デビュー曲『新宿の女』で音楽シーンに姿を現した藤圭子は、続く『女のブルース』、そして歴史的名曲『圭子の夢は夜ひらく』で爆発的なヒットを記録する。当時の所属レーベルであったRCAレコードからリリースされた楽曲群は、オリコンチャートで20週連続1位という前代未聞の偉業を達成した。
彼女が体現した深淵な怨歌(えんか)の世界観は、従来の演歌の枠組みを根底から揺さぶった。夜の街の哀しみや孤独を吐露するような歌声は、NHKの歌番組をはじめとする全国波を通じてお茶の間に届けられ、高度経済成長期の陰影を象徴する時代のアイコンとなったのである。彼女が音楽業界に与えた衝撃は、単なる歌謡曲の流行を超えた文化現象そのものであった。