柳川のうなぎ文化を語る上で欠かせないのが、柳川うなぎせいろ蒸し発祥の店として知られる元祖本吉屋の存在です。江戸中期の天和元年(1681年)、初代・本吉屋治郎四郎が創業した同店において、「焼き上げた蒲焼をいかに冷まさず、ふっくらと柔らかな状態で客へ提供するか」を追求した結果、杉のせいろで蒸し上げる調理法が生み出されました。
有明海に面し、筑後川水系の豊かな恵みを受ける柳川は、古くから天然うなぎの好漁場でした。掘割の舟運で栄えた商人や文人墨客をもてなす料理として定着したせいろ蒸しは、単なる郷土料理の枠を超え、柳川の歴史的アイコンへと昇華していったのです。
一般的な蒲焼やうな重との決定的な違いは、「二度蒸し」の手間にあります。秘伝のタレをまんべんなく絡めたご飯をせいろに盛り、炭火で香ばしく焼き上げた蒲焼を乗せ、さらに職人が手焼きした細切りの錦糸卵を添えて、せいろごと高温の蒸気で一気に蒸し上げます。この工程により、うなぎの余分な脂がご飯へと程よく落ち、米の一粒一粒に香ばしさと旨味が凝縮されます。