テレビアニメ『NANA』の制作において、制作陣と原作者の矢沢あいが下した最も大胆な決断の一つが、「セリフを担当する声優(朴璐美)」と「歌唱を担当するアーティスト」を分けるダブルキャスト体制でした。物語の核である劇中バンド「BLACK STONES(ブラスト)」のフロントマンとして、聴く者を一瞬でねじ伏せる圧倒的な説得力が歌声に求められたからです。
白羽の矢が立ったのが、当時モデルから本格的なロックアーティストへと舵を切り、荒削りながらも強烈なエネルギーを放っていた土屋アンナでした。「ANNA TSUCHIYA inspi' NANA (BLACK STONES)」という特別な名義が与えられた背景には、単にキャラクターの歌を代行するのではなく、「土屋アンナという一人のロッカーを通して大崎ナナの魂を表現する」という明確なコンセプトが存在していました。
制作当時、矢沢あい自身も土屋アンナの放つ天性のハスキーボイスと、嘘のないストレートなロックスピリットに強い共感を寄せていたと語られています。スタジオでのディスカッションを重ねる中で、土屋アンナが持つ「脆さを抱えながらも前を向いて叫ぶ強さ」が、まさに漫画から抜け出してきた大崎ナナそのものであると確信された瞬間でした。