法務省の商業・法人登記統計を確認すると、年間数万件ペースで新設される株式会社や合同会社に対し、合資会社の新規設立件数は年間わずか数十件から100件未満にとどまり、全体の0.1%にも満たない水準です。なぜここまで合資会社は選ばれなくなったのでしょうか。そこには2006年の会社法大改正に伴う明確な構造的理由が存在します。
法改正以前の旧商法時代、株式会社を設立するには「資本金1,000万円以上」、有限会社でも「資本金300万円以上」という高い資金ハードルが存在しました。そのため、「資本金が足りないけれど法人格が欲しい」「少額の元手で親族や知人と素早く起業したい」という起業家が、資本金規制のない合資会社や合名会社を選択していたという歴史的背景があります。
しかし、2006年の会社法改正によって資本金1円から株式会社が設立できるようになり、さらに同じ持分会社でありながら「出資者全員が有限責任」「1人だけでも設立可能」というアメリカ型の合同会社(LLC)が新設されました。この法制度の劇的な変化により、「わざわざ個人の財産を危険に晒す無限責任社員を用意し、必ず2人以上集めて合資会社を作る合理的理由」が完全に消滅したのです。