家族が亡くなった際、役所に死亡届を提出しただけで即座に銀行口座が止まるわけではありません。役所から金融機関へ自動的に通知されるシステムは現行法上存在せず、遺族からの連絡や新聞の訃報欄、地域のネットワークなどを通じて金融機関が訃報を認知したタイミングで口座凍結が実行されます。
口座が凍結される最大の理由は、遺産の散逸を防ぎ、すべての法定相続人の権利を保護するためです。民法上、被相続人の預金は亡くなった瞬間に「相続人全員の共有財産」となります。そのため、誰か1人が勝手にお金を引き出す行為は、他の相続人の財産を侵害することと同義になります。
では、もし暗証番号を知っているからと、生前のキャッシュカードを使って勝手におろすとどうなる罪に問われるのでしょうか。実務上、直ちに警察に逮捕される刑事事件(窃盗罪や私文書偽造・同行使罪など)になるケースは親族間では稀ですが、民事上は以下のような極めて重いリスクを背負うことになります。
第一に、他の相続人から「遺産を使い込んだ」と疑われ、不当利得返還請求訴訟や損害賠償請求を起こされる決定的な引き金になります。第二に、預金を処分したとみなされ、民法第921条の「法定単純承認」が成立し、相続放棄預金引き出し影響によって故人の借金を放棄できなくなるリスクです。良かれと思って行った葬儀費用の引き出しが、取り返しのつかない負債の引き継ぎにつながる危険性があります。