近年、ネットニュースや週刊誌で「高齢者の透析は見合わせるべき」「透析を始めると身体がボロボロになる」といった論調が取り沙汰されることがあります。しかし、これらには重要な盲点と統計のバイアスが含まれています。
第一の誤解は、「死因の第1位が腎不全ではない」という事実を知らないことです。日本透析医学会のデータによると、透析患者の死因トップは心不全(約23〜25%)であり、次いで感染症(約20〜22%)、悪性腫瘍(がん、約9〜10%)、脳血管障害(約6〜8%)と続きます。つまり、透析患者の寿命を縮めているのは透析機器の不全ではなく、全身の動脈硬化によって引き起こされる心筋梗塞や心不全、そして免疫力低下に伴う肺炎などの感染症なのです。
第二の誤解は、高齢者における過剰除水の問題です。高齢者の身体に対して若年者と同じようなドライウェイト(透析後の目標体重)を厳密に設定しすぎると、透析中に血圧が急低下して意識消失や脳虚血を招くことがあります。現在では、個々の残存機能や生活環境に合わせた「マイルドな除水設定」や「透析時間の柔軟な調整」が行われており、一律に寿命を縮めるような過酷な管理は過去のものとなっています。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
透析治療を前向きに継続し、健やかな天寿を全うできる人と、予後が悪化しやすい人には明確な行動パターンの差異が存在します。
【良好な予後を期待できる人(適応度が高い人)】
- 週3回の透析を一度も自己判断でスキップ・短縮せず、生活の基軸に据えられる人
- 毎日の体重測定を欠かさず、中2日でも体重増加率を5%以内(理想は3%以内)に抑えられる人
- 血液検査のデータ(リン、カリウム、ヘモグロビン値)に関心を持ち、医師や管理栄養士と能動的に対話できる人
- 腕のシャント(血管)の狭窄や感染に敏感で、日々の音・拍動のセルフチェックを怠らない人
【予後悪化のリスクが高く慎重な是正が必要な人(改善が急務な人)】
- 「喉が渇くから」と水分を過剰摂取し、透析間隔で体重を3〜4kg以上増やしてしまう人
- 加工食品や清涼飲料水に含まれる「無機リン」を過剰摂取し、血管の石灰化を加速させている人
- 家庭内や人間関係のストレスを過食・飲酒で紛らわせ、透析直前の血圧やカリウムを危険域まで跳ね上げる人
- 治療を「医師や家族に強制されている」と捉え、自身の体調管理に対する主体性を放棄してしまっている人