田中芳樹という作家のファンであれば、彼の作品において主要人物が容赦なく命を落とす展開自体は珍しくないことを知っている。代表作『銀河英雄伝説』でも見られたこの傾向から、彼は親しみを込めて「皆殺しの田中」と呼ばれることもあった。しかし、『アルスラーン戦記』の最終巻で見せた展開は、そうしたファンの耐性をも容易に打ち砕くものだった。
パルスの未来を担うはずだった十六将の英傑たちが、蛇王ザッハークとその一党との死闘の中で、一人また一人と命を散らしていく。天才軍師ナルサスの非運な最期をはじめ、猛将ダリューン、エラム、ギーヴ、ファランギースまでもが次々と倒れていく様は、まさに怒涛の勢いだった。あまりにも無慈悲な死の連鎖に、読者は感情の整理が追いつかないまま、最後のページを迎えることとなったのである。