報道各社がこぞって探し求めた「お相手」の人物像。地元紙や一部の女性誌が、山口県出身の元ヴァイオリニスト女性であると特定記事を打ち出すと、ネット上の特定班が一斉に牙を剥いた。過去の演奏動画、SNSの履歴、実家の写真までが次々と暴露され、デジタル上の暴力が加速していった。
羽生側が最後まで公式な名前や経歴を口にすることはなかった。非公表を貫くことで守ろうとした防壁は、アクセス数や実売部数を追い求めるメディアの波に飲み込まれた。過剰な特定合戦がもたらした被害は、芸能人ではない一般市民の権利がどれほど脆く踏みにじられるかを過酷な形で示したのだった。