現代の電子体温計の中核を担うのは、「サーミスタ」と呼ばれる極小の半導体素子だ。温度変化に伴って電気抵抗値が敏感に変化する性質を利用し、わずか100分の1度単位の揺らぎを逃さず捉える。
日本の医療機器産業をリードするオムロン ヘルスケア株式会社やテルモ株式会社の製品に搭載されている「予測式」の演算ロジックは極めて精緻だ。脇に挟んだ直後の数十秒間の温度カーブを分析し、「10分後に体が到達するであろう平衡温」を驚異的な精度で割り出す。摩擦による局所的な摩擦熱や、お湯による急激な外部熱は、演算チップから見れば「異常なノイズ」として弾かれてしまう。技術者たちが何十年もかけて積み上げた統計データは、付け焼き刃の小細工を軽々と凌駕している。