本作のヴィジュアルを語る上で避けて通れないのが、圧倒的な風景描写で世界を魅了してきたコミックス・ウェーブ・フィルムの存在だ。新海誠監督が築き上げた、雨の質感や光の粒立ち、情感豊かな背景美術の系譜を受け継ぎつつも、今回の現場はあきらかに別次元の表現領域へと踏み込んでいる。
美術監督の作業デスクには、従来のデジタルペイントとは一線を画す、粒子感のあるアナログ調のテクスチャが山積みにされていた。単に現実を美しく模倣するのではない。観客の胸の奥底にある原風景を容赦なく揺さぶるような、生々しくも幻想的な筆致。新時代のクリエイターたちが「新海誠」という巨大な山脈を意識しながら、それをいかに乗り越えようと諠噪しているかが、その一枚一枚から痛いほど伝わってくる。