建築工学の観点から見ても、シャルトル大聖堂はフランスゴシック建築の特徴を余すところなく体現しています。最大の特徴は、壁面を支える外部のアーチ状構造体であるフライング・バットレス(飛梁)の大胆な採用です。重い石造天井の荷重を外側に逃がすことで、従来のロマネスク建築のような厚い壁と小さな窓から脱却し、身廊の壁面全体を広大なステンドグラスで埋め尽くすことが可能となりました。天井高約37メートルに及ぶ交差リブヴォールトは、垂直性を極限まで強調し、視線を天へと導く心理的効果を綿密に設計しています。
そして、身廊の中央床面に目を落とすと、直径約12.85メートルの巨大な円形舗装が姿を現します。これが中世キリスト教の象徴哲学が凝縮された床の迷路「ラビリンス(Labyrinthe)」です。白と暗灰色の敷石で描かれたこの迷路は、分岐のない単一の道(一本道)で構成されており、全長は約261メートルに達します。
かつて十字軍の遠征や情勢不安により、危険を冒して聖地エルサレムへ巡礼することが叶わなかった中世の人々にとって、このラビリンスを祈りを唱えながら膝行(膝立ちで進むこと)でたどる行為は、「精神的な代理巡礼」を意味していました。迷路の中心部は「天上のエルサレム」を象徴し、外周の曲がりくねった道のりは、人間の人生における迷いや試練を表しています。ただの装飾ではなく、身体的な動作を通じて内面を浄化する宗教儀礼の舞台であった点に、中世精神文化の神髄が宿っています。