常に大衆の視線に晒され、虚構と現実の狭間を生き抜いた芸能人たちの墓所には、生き急いだ者たちならではの切実なドラマが宿っています。
映画『男はつらいよ』の車寅次郎役で国民的英雄となった渥美清(本名:田所康雄)の墓は、新宿区の寺院にひっそりと佇んでいます。そこには「寅さん」の面影は一切なく、本名とともに自ら詠んだ俳句「お遍路やすでに風より秋の風」が刻まれています。生涯を通じて私生活を一切明かさず、寅次郎という虚像を完璧に演じ切った名優が、最期にようやく一人の市井の俳人「風天」へと還っていった軌跡が、その静寂な佇まいから痛切に伝わってきます。
また、破天荒なアジテーションで時代を挑発し続けた劇作家・寺山修司の墓所(八王子・高尾霊園)には、自作の詩篇の一節「愛するひとびとのために/憎むひとびとのために/死者たちのために」が刻まれています。生前、母との激しい共依存や愛憎劇に苦悩し、既存の家族制度を解体することをテーマにし続けた彼が、死してなお「他者との関係性の網の目」の中に自らの魂を縛り付けているかのような構造は、文学史的にも極めて象徴的です。