ロケハンとは、和製英語の「ロケーション・ハンティング」を省略した業界用語です。英語圏では「Location Scouting(ロケーション・スカウティング)」と呼ばれ、映画、テレビドラマ、CM、ミュージックビデオ、雑誌スチールなどの制作において、スタジオ外の撮影候補地を探し、選定・調査する一連のプロセスを指します。
日常会話で使われる「下見」や「会場見学」とロケハンの決定的な違いは、「撮影という特殊な行為が物理的・技術的・法的に成立するかを検証する点」にあります。一般的な旅行の下見であれば「景色が綺麗か」「アクセスが良いか」を確認すれば十分ですが、プロのロケハンでは以下の3層を同時に審査します。
第1に「演出意図の具現化」。監督やクライアントが求める世界観や画角がその場所で再現できるかどうかです。第2に「技術的制約のクリア」。カメラの画角(レンズのミリ数)、照明機材を設置するスペース、太陽光の入射角度、電源容量、同録(同時録音)時の環境ノイズ(近隣の幹線道路や空調音、電車の通過音)の有無を精密に測定します。そして第3に「法的・運用の成立性」です。撮影許可の取得可否、搬入車両の駐車場所、控室の確保、近隣住民への説明手続きなどをすべて洗い出します。
「ロケ(本番撮影)」が実際にカメラを回して成果物を生み出す場であるのに対し、「ロケハン」は本番で起こりうるすべてのリスクを事前に潰し込むための防衛線です。映画制作手順におけるプリプロダクション(撮影前準備)において、ロケハンの成否がプロジェクト全体の予算とクオリティを左右します。