眠りの質を改善しようとする際、多くの人がまず手を伸ばすのが市販のサプリメントや高額な快眠マットレスです。しかし、睡眠医学の観点からは、これらに対する過度な期待や誤った対処法が、かえって問題を複雑化させているケースが少なくありません。
まず検証すべきは、いわゆる熟睡できないサプリへの過信です。GABAやL-テアニン、グリシンなどを配合した機能性表示食品は、軽度の一時的な緊張緩和には寄与するものの、慢性的な睡眠障害や重度の体内時計の乱れを根本から治療する医薬品ではありません。生活習慣の改善を怠ったままサプリだけに頼っても、期待した効果が得られないのは当然と言えます。
さらに警戒すべきは「寝酒(アルコール)」による寝つきの改善です。「アルコールを飲むとすぐに眠れる」と感じるのは、単にアルコールの鎮静作用によって脳の活動が麻痺しているに過ぎません。アルコールが体内で分解される過程で生成されるアセトアルデヒドには交感神経を刺激する作用があり、就寝後3〜4時間以降の睡眠を著しく分断します。結果として利尿作用も加わり、激しい中途覚醒と脱水を招く元凶となります。
また、体型や骨格に合わない寝具を「高級だから」と使い続けることも逆効果です。寝返りがスムーズに打てないと局所的な血流悪化を招き、無意識の寝返り努力が覚醒の引き金になります。外来治療の現場でも、マットレスの硬さや枕の高さを見直しただけで、浅い呼吸が改善した事例が多数報告されています。