ホムンクルスたちは一般に人間を見下し、冷酷非情な存在として描かれますが、グラトニーの内面には極めて純粋で幼児的な他者への依存心が存在していました。彼が絶対的な信頼を寄せていたのが、「色欲」を司るラストです。行動を共にする機会が多かったラストは、知能の低いグラトニーを時に優しく宥め、時に的確にコントロールする母親や姉のような役割を果たしていました。
グラトニー自身もラストの指示には絶対に従い、彼女が「まだ食べちゃダメ」と言えば駄々をこねつつも我慢し、「食べていいわよ」と許可を出した瞬間に歓喜して標的に襲いかかるなど、その関係性は猛獣とその飼育員、あるいは幼子と母親のようでした。それだけに、東方司令部での激闘においてラストがロイ・マスタング大佐の焔の錬金術によって焼き尽くされ、完全に消滅した報せを聞いた際のグラトニーの絶望と怒りは凄まじいものでした。
普段の無邪気さは完全に消え失せ、マスタングの顔や名前を耳にしただけで激昂し、理性を失って胸部の「偽りの扉」を解放する引き金となったのです。「ラストを殺した奴」に対する純粋な復讐心は、人造人間でありながら人間の情念を誰よりも色濃く体現していた名場面としてファンの記憶に刻まれています。